誠-変わらぬ想いの果て-
「奏。お願いですから」
「響。私は両親をダシに使った奴らが許せない。ゴキブリは一匹いたら百匹いると思え。三匹だったらしいから三百匹かな?」
「それを一人で相手を?」
「そのつもり」
「駄目です!!」
響はいつになく大声を出した。
行かせまいと両腕を広げる。
「みなさんの気持ち、考えて下さい!!」
精神が不安定な今、何が起きても不思議ではない。
現に、安倍晴明が通りがからなかったらどうなっていたか分からないというではないか。
そんな状態で大事な主を行かせるわけにはいかない。
「……多少なりとも分かっているからこそ、だよ。彼らは私が行くと言ったらついてきてくれる。そんな者達だ。だから私は術式を使ってでも眠らせなければならない」
「どうして?彼らだって、奏のこと、守りたくて……」
「私だって守りたいからだよ。もう、守れないのは……嫌なんだ。………響、ごめん」
パリン
奏が響の張る結界に手を伸ばしたかと思うと、斜めに引き裂いた。
簡単に崩れ去る結界。
まるでガラス細工のように粉々に砕け散って宙に消えた。