誠-変わらぬ想いの果て-
「響、お休み」
次の瞬間、奏は響の耳元で囁いていた。
ゆっくりと目蓋が落ちる。
――また、なの?
また私は奏を守れないの?
私はいつまで経ってもみんなみたいに背を預けてもらえないの?
同じ場所に立つことも駄目なの?
早く…早く鈴さんみたいになりたい。
奏の足手纏いは…嫌だよ。
前屈みに倒れた響を奏は両腕で抱き留めた。
そのままベッドに寝かす。
別に怪我をしたわけではないから、それは苦でもなんでもなかった。
むしろ、響が軽すぎて驚いたくらいだ。
作戦は面白い程成功した。
爺が去れば、部屋は人間と術が使えぬ響。
後は自分の独壇場だ。
響が脆弱なりとも結界を張れるようになっていたのは嬉しい誤算だった。
彼女も日々成長している。
たかだか百五十年で自分や珠樹のように術が駆使できるはずもない。
それにしても、響が一番最初に使えるようになったが結界とは。
結界は“功”ではなく“守”の術。
なんとも響らしい。
奏は響のサラサラとした髪を数度撫で、足元の近藤達に気をつけながら部屋を後にした。