誠-変わらぬ想いの果て-
「何が目的か知らないけど、僕達は今忙しいの。邪魔をするなら…」
「邪魔をするなら?」
片眉をひょいと上げ、彼方は挑戦的だ。
すると……
「斬るわ」
彼方の背後で聞き慣れた涼やかな声がした。
『奏(ちゃん)!!』
彼方も顔だけ振り返り、フッと笑う。
奏は刀の切っ先を彼方の背にしっかりと当てていた。
その先が揺らぐことは決してない。
彼方の視線が奏に向いているうちにと、二人も刀をスッと鞘から抜いた。
「一体何をしに来たのかしら?」
「随分と他人行儀な口調をするようになったんだね、奏は」
「あら。可笑しなことをおっしゃるのね。あなたと私達は赤の他人でしょう?」
奏は笑顔で、しかし目は、目だけは冷えた煌めきを見せている。
そこに昔、兄様、兄様と彼方の後ろを離れずついて回っていた少女はいない。
いるのは既に幾何かを斬ってきた血濡れた刀を持つ、雷焔の生き残りの少女だ。