誠-変わらぬ想いの果て-
「何年寝ていたの?」
「百五十年くらいかな?」
奏と同じ顔…双子の兄、珠樹(タマキ)が指折り数えた。
百、五十年。
じゃあ、もう。
あの人達は――。
「さぁ、奏様。これを」
「何?」
双子の雷焔家に仕える爺…音無旺輝(オトナシ オウキ)は一通の書状を手渡した。
丁寧に折り畳まれている紙をゆっくりと開き、流し見ていく。
次第に奏の瞳が輝きだした。
これはこれは―――。
「―――…命令とあらば仕方ないよね?」
「奏?行くの?」
珠樹が不機嫌になり、奏をぎゅっと強く抱きしめた。
「行くよ。準備して?」
「え〜?僕も〜?」
「じゃあ、留守番してていいよ。
響、行こう」
「はい。支度してきます」
「奏様、私も行きます」
「―――…僕も行くよ。
あ〜あ〜嫌だ嫌だ。
あいつらとまた会うなんて」
サァーっと爽やかな風が部屋に吹いてきた。
奏の黒髪が風にさらわれ、宙に舞う。
爽やかな春の風。
久方ぶりの感覚。
奏は髪を押さえ、ころころと笑った。