誠-変わらぬ想いの果て-
その時、玄関を開く音がした。
「おーい。帰ったぞー。
奏ー。ちょっとこっちこーい」
玄関からは低い男の声がする。
奏は箸をくわえて、しばし黙った。
「―――あ、土方さん忘れてた」
奏がいないとこちらとあちらを行き来できない。
土方は一人、教師であるために、取り残されていたのだ。
声の雰囲気からして、大分ご立腹のご様子。
「―――それで近藤さん達の方は何かありました?」
「雷焔君、トシが」
「いいんです。後で謝りますから」
奏の後はいつだろうか。
少なくとも今日中ではないだろう。
土方の足音が近づいてくる。
土方も奏が出てくるとは最初から思っていなかったはずだ。
その証拠に、呼んでから足音が向かってくるまでが異様な早さだ。
「―――実は」
近藤もそれならばと、真剣な表情になり、口を開いた。