誠-変わらぬ想いの果て-
「なら違うな」
「他に狐で心当たりは?」
珠樹が山崎の椅子に座り、奏の机に頬杖をついている。
「いや。狐――妖狐は潮ちゃんが統率してるから。 時雨の時はアクシデントだったし」
元老院第二課長の潮。
その正体は七千年と少し生きている奏や珠樹よりもさらに長命の九尾の天狐。
彼がいる限り、妖狐はあまり派手な行動を起こさない。
奏はフルフルと首を振った。
「なんか、きなくせぇよな?」
「あぁ。しかも失踪者が出ているのなら、話は穏やかではない」
「私、今晩ここで張ってみようと思うの」
奏が窓の外を見ながら、フッとこぼした。
その目線の先には、今は使われていないらしい旧校舎がある。
奏はそこが無性に気になっていた。
「俺達も残るぜ!!」
「あぁ。なんせ俺達、元老院の敷地内以外じゃ無敵だからな」
奏はぐっと握り拳を作る男達を見て、にっこりと笑った。