one day
 部屋の中は出てきた時とほとんど変わっていなかった。開けっぱなしの窓から近くの床が雨に打たれてびしょ濡れになっている事以外は。部屋の中は湿気がひどく、蒸し暑く、空気がもあもあしていた。僕は窓を閉め、床をタオルでふいた。僕の家には雑巾なんてものは無い。タオルは雑巾になるし、それを洗えばタオルにもなる。それから、冷房のドライモードのスイッチを押して、シャワーを浴びた。ドライモードだなんて気の利いたものがあるのに、世の中どうかしてる。冷房のドライモードより気の利いた人を僕は知らない。もちろん、それは僕がアホでマヌケな人間で、可哀想な奴だからかもしれないが。しかし、今はそんな事はどうでもいい。熱めのシャワーで体を温め、強めのシャワーで意識を取り戻すが何よりしたい事であり、必要な事だ。シャワーを浴び、着替えを済ませると、特にすることもなかった。今日は何かしら変な事が二回起き、それでまた何も変わらない最低の生活が始まるという事を思った。実際、その通りに思えた。音楽を聞き、それに飽きたら、TVを見る。TVは飽々しても見続けてしまう。わりかし、楽しかったり、興味を引いたりする事があるかもしれないからだ。その惰性の薄っぺらい感覚がずるずる続く。とてつもなく効き目の薄い麻薬みたいなものだ。TVに映る誰かの冗談でだらしなく笑い、殺人や自殺のニュースに気が滅入る。そして何も記憶に残らない。ただ、それを繰り返すのみだ。そんな生活が戻ってくるように感じた。ベッドに座り、煙草に火を点ける。明日は何か用事があったかと思ったが、確認するまでもなく何も無いはずだ。しかし、何もする事がないからといって、気が休まるという事でもない。体だけがどんどん腐っていくように感じる。


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