one day
 確かに彼女のメモの住所は僕のアパートを指していて、僕は日本人だった。
「この街で僕しか日本人がいないかどうかは知らないが、どうやら叔父さんが言ったのは僕の事のようだね。でも、どうして?」
「それは私もわからない。私が何の為にあなたを訪ねるようにと、叔父が言ったのかは。でも、一つわかってる事がある。」
「それはよかった。今のままじゃ、ヒントなしでフェルマーの定理を解けと言ってるようなもんだ」
 彼女は少しも微笑まずに続けた。
「これからあなたに何か問題が起こるわ。私は、それを伝える為に来たの」
 僕はよく意味がわからなかった。意味がわからなくても、適当に話を続けてしまうのは僕の悪い癖だ。
「うん。そうか。そうなんだ。しかし、それはどんな問題なんだろう?そこまでは叔父さんは言ってなかったのかな。多分、今までの話の流れからすると言ってないだろうけど。」
「ええ、その通りよ。私の叔父はどこか先見の明みたいなものがあるの。でも、具体的な事はわからない。未来はとても脆いものだから、具体的に伝えてしまうと、物事は悪い方向にしか進まないの。」
「少し、事情が飲み込めてきたような気もするけど、本筋は全くわからないな。他には叔父さんは何か言ってた?」
「時間はそれ程ないって、多分一日くらいじゃないかって言ってたわ。それだけ。」

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