ライン
one
「はじめまして、工藤誠(クドウマコト)と申します。この学校で数学を教えることになりました。まだ新米教師だけど仲良くしてください。」
教壇に立って、彼は言った。
仲良くしてください、なんてお友達みたいにできるか。
セットされた黒髪は少し長め。
黒縁の眼鏡は伊達眼鏡みたい。
整った顔立ち。
長身でがっちりしたガタイ。
あまり好きではないタイプ。
少女漫画に出て来そうな
チャラくて女子生徒に好かれそうな感じ。
「カッコイイね。」
隣の席の平岡奈々(ヒラオカナナ)がわたしの耳元で囁くが納得できなかった。
「わたしは嫌いだな。」
と、わたしが言うと奈々はまたか。という顔をして、
「そんなんだから恋できないんだよー!毒舌!冷酷!」
「なんとでも言って。」
そう言ってわたしは黒板を見つめた。