ライン
「俺が数学教師になろうと思ったのも高校生の時だったかな」
授業を始めるのかと思えば、
自分の思い出話をするようだ。
周りの女子は目を輝かせて、
コイツの話に茶々を入れたり、
笑ったりしている。
仲良くしたいって気持ちを丸出しにして。
それを見てるだけで、聞いているだけで
一瞬、まぶたが鉛のように重くなった。
確かに勉強は出来ないし眠い。
けど、コイツの話を聞くのはもっと眠い。
コイツの話を聞くくらいなら
ピアノ協奏曲を聴いている方がよっぽどいい。
そう思うと、わたしの指が疼いた。
机を鍵盤のようにして指を動かす。
頭の中に駆け巡るメロディー、
綺麗でさわやかなピアノの音色。
早く家に帰ってピアノを弾きたい。
そう思っていると、突然名前を呼ばれた。