部活探偵のツンデレ事件簿－タイム・トリッパー殺人事件－

「沢村先生！」

声の主は穐本だった。部室の片づけが済んで扉を施錠した事を報告に、足早に職員室を目指す彼女の目に飛び込んで来たのは、前かがみで小刻みに震えながら視線の定まらない青褪めた表情で立ち尽くす直子の姿だった。

穐本は、その尋常でない直子の様子を見て、少し躊躇しながらも、彼女のそばに駆け寄って瞳を覗き込みながら、心配そうな表情でこう尋ねた。

「先生、大丈夫ですか……先生…」

直子の肩を揺さぶりながら穐本は心配そうな表情で直子に向かって声をかけ続ける。そして、程無くして直子の瞳は焦点を取り戻し、顔色も桜色に染まって、正気を取り戻した様に見て取れた。


「――あ……ええ、大丈夫よ、ちょっと、立ち眩みを起こしちゃったみたい」

直子はそう言って、かなり無理矢理微笑みながら穐本に向かってそう言った。

でも、先生……」

「ううん、大丈夫。それより、部室の片付けは終わった？」

「え、あ、はい。終わりました。皆帰りましたよ」

少し戸惑い気味に答える穐本の瞳は、まだ直子の事を心配している様に見えた。