部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「そう、なら、良かったわ」

無理矢理作ったぎこちない笑顔を穐本に向けながら、ちょっと震える手で穐本から部室の鍵を受け取ると

「じゃぁ、気をつけて帰ってね……」

そう言って穐本に背を向けると、直子は職員室の方向に向かって歩き出した。その後姿を心配そうに穐本が見詰める。

直子が歩き始めた校舎の廊下は、既に日は陰り、先程まで眩しいくらいに廊下に乱反射していたオレンジ色の光はすっかり過去の物となり、闇が支配する空間に変わっていた。ここから、用の伝説は始まるのだ。

学校が見せる本当の姿は、ひょっとしたら、この影の面なんかも知れない。何が潜んでいるのか分らない闇の面は人の心を凍らせる。

その凍った心が、事件の引き金となるのだ。

闇は底なし沼の様に深く、そしてゆっくりと獲物を自分の中に誘い込む。気がついた時には既に遅いのだ。……
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