部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
2011年6月14日(火)午後07:00『告白』


職員室の扉は外れ、ガラスが割れて飛び散っている。

その前にぽつりと座り込み呟く様に語る直子の姿は、妙に線が細くて酷く痛々しく見えた。

場数を踏んだ前原でさえ、その様子を直視する事に少し抵抗が有る様で、焦点の合わない視線を向ける直子を直接見ることはせず、顎を右手でさすり、さり気なく動揺を隠しつつ、直子に向かって、こう切り出した。

「色々と、聞きたい事は有るんですが、先ずは、今、目の前で起こった事を説明して頂ければ有り難いのですがね…」

正直言って、何から聞いた物かと戸惑う前原の言葉はぶつ切れで、亜矢子や琢磨の耳にも、ちょっと質問内容が漠然としてて用量を得ない様に感じたが、自分が質問しても、同じ状況で有ろう事が推察できたから、あえて何も言わず、二人寄り添って、じっと直子と前原の言動を眼で追いかけた。

「――簡単に…信じてはもらえないでしょうね…」

直子の震えるか細い声が暗闇に包まれ始めた校舎の廊下に響く。

遠雷の音にかき消されそうなか細い呟きだったが、不思議な響きは闇の力を借りて、妙に鮮明に三人の耳に届いていた。

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