部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
酷く矛盾した話では有るが、少なくとも、現時点での直子は理事長を殺した犯人ではない。直子の言葉を全て素直に信じたとすると、一見、事件は起こった様に見えるのだが、実はまだ、何も起こっていないと言う事になる。

「つまり、これから未来の先生を監視してれば、全て無かった事になるかもしれないって言う事ね、でも、変じゃない。事件が起こる前の自分を殺しちゃったら、自分の存在自体が危ういんじゃない?過去の自分を無きものにしたら、未来の自分はどうなるのよ」

亜矢子の問いに直子は何も答えなかった。

いや、明確に答える事が出来なかったのだ。過去の自分を抹殺したら未来の自分がどうなるかなど、やって見なければ分らない。

恐らく、この時点で明確に答えを導き出せる者はいな筈だ。誰も体験した者がいないからだ。

雷雲は完全に学校の上空から抜け切ったらしく、静かな闇があたりを包み込み、空気は幾分冷え込んで、六月の気温とは思えない程だった。

肌寒く感じられたのは、気温の性だけでは無いのかも知れない。

直子の口から語られた話が、心を冷やしていたからかもしれない…
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