部活探偵のツンデレ事件簿－タイム・トリッパー殺人事件－

直子が少しヒステリックに喋っている処に、昨日一緒だった若い刑事が入って来て、角刈りの刑事に何事か耳打ちをした。

それを聞いた角刈りの刑事は、驚いた表情を見せた、そして逆に若い刑事に聞き返した。若い刑事は、それに対して大きく頷いて見せた。

「鑑識の報告です。あなたの手からは血液反応が出なかったそうです。あれだけの出血が有れば、帰り血の一つでも浴びて居てもおかしくないと考えたのですが……」

「ですから、私は関係無いと言ってるじゃぁ有りませんか」

再び取調室に重い沈黙が訪れた。その沈黙を破る内線電話の音。

その電話を若い刑事が取り、一言二言言葉を交わした。最後の言葉は「わかりました……」だった。



「証拠不十分で釈放だそうです……」



若い刑事は短くそう告げると角刈りの刑事は膝に両手をついてはあっと大きく溜息をついた。そしてゆっくりと立ち上がる。

「学校までお送りします。こちらへどうぞ……」

悔しさを必死で隠す刑事の顔を極めて冷静に見詰める彼女の表情には、ほのかに勝利の笑顔が浮かんでいた。