部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「分ってるわよ、守秘義務は絶対に守るから」

そう言って亜矢子は喜々として立ち入り禁止のテープをひょいと越え、理事長室の中に、さっさと消えて行った。

★☆★☆★☆

理事長室とは言っても、それ程広い部屋では無い。概ね十畳程度の広さしか無い。ちょっと大きめの机と応接用のソファー、後は小さな書庫が有るだけで、ほぼいっぱいで有る。グラウンドが見渡せる大きな窓と、隣の職員室に通じるドア、それに今は行って来た廊下側のドア。それがこの部屋の全てだった。

「わりと殺風景なのね……」

部屋の中をぐるりと見渡した亜矢子の正直な感想だった。

「発見された当時、二つのドアと窓は施錠されていて、被害者はこの、机とソファーの間に倒れていた。胸から血を流しながらね。そして凶器と思われるナイフは、ソファーの下に落ちていた……ご丁寧に容疑者の指紋を残してね」

前原が亜矢子の後ろで説明とも呟きともとれる曖昧な口調でそう言った。

「ドアノブからは指紋は出てるの?」

亜矢子の質問に前原は小さく首を横に振りながらこう答え得た。

「出て居ない。ちなみに拭きとった形跡も無いそうだ」

亜矢子は、ふんと鼻で返事をすると再び部屋の中を見回し始めた。
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