部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
テレピン油と油絵具の香りがまじりあった独特の香りが部屋中に漂う。

沢村直子はイーゼルにかぶせてあった布を取り払うと、画きかけの風景画をじっと見詰めた。絵画仲間数人と開く予定の展覧会に出品する為の作品で今の自分の実力を全てぶつけた意欲作だった。

昨日までは、お気に入りの一枚だったのに、今日は何故だかくすんで見える。気分の問題なのは明らかだが、黒の絵具で塗りつぶしてしまいたい衝動にかられた。

直子はイーゼルの前に置かれた椅子にぺたりと座り込むとぼんやりと画きかけの絵を見詰めながらぼんやりと呟いた。

「殺す事はないじゃない……」

その問いに答える者は、部屋の中には誰もいなかった。
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