部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
「あら、別にそんな事は無いでしょう。この程度の態度を容認出来ない様じゃ正義の味方だって言えないわ。公僕は正義の味方なんでしょ?」

全く反省の色が無い亜矢子はコーヒーカップに口をつけながら琢磨の制止を一笑に臥し、その失礼極まりない視線を再び前原に向けた。その様子を見た琢磨は両手で頭を抱えてテーブルに突っ伏してしまった。そして、こいつには何を言っても無駄だと言う事を、改めて自覚したのだった。

「やはり、密室と言う処に引っかかるのかね?」

常識を知らない若者に対しても寛容な心を見せるのは、前原の仕事と経験に裏打ちされているのだろう。

「当然よ。私、昔っから思ってたんだけど、殺人を犯す時、密室にする理由ってのが、どうにも理解出来ないのよ。たいていのお話は自殺に持ち込みたいって言うのが趣旨なんでしょうけど、あんな殺し方しちゃったんじゃ、これは殺人事件ですよって、言ってう様な物じゃない。もっと、なんて言うのかしら、疑問を抱かせない工夫をする必要が有ると思うの」

前原は、嬉々として持論を語る亜矢子を見詰めながら、ゆっくりとコーヒーをすすった。
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