部活探偵のツンデレ事件簿－タイム・トリッパー殺人事件－

「――い、いえ、何でも有りません。心配して頂いてありがとうございます」

そう言って、軽く会釈する直子を見ながら教頭は決して濃くは無い髪の毛を手で撫でながら心配な表情を直子に向ける。

「何か有ったんですか？宜しかったら、話を聞かせて頂けますか。力になれるかどうかは分りませんが、人に話すと気分が軽くなったりする物ですよ」

故郷の父親の表情を思わせる教頭の表情に直子は思わず縋りそうになってしまったが、これは人に話せる問題では無いと言う事を改めて思い返し、複雑な笑顔で教頭に向かって、自分自身に言い聞かせる様に笑顔を作る。

「いえ、本当に大丈夫です。確かにちょっと悩んでいる事は有りますが、自分で解決できる問題ですから御心配には及びません。御心配頂いて、本当にありがとうございます」

教頭の言葉を突き放す様な表情で改めて一礼すると再び事務仕事の続きに取りかかった。


「もしも、どうにもならない問題でしたら、是非相談して下さいね。心にため込むのは良くない事ですよ」