部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
亜矢子は前原の奥歯に物が挟まった様な物言いに何を言いたいのか察して、再び顔を前原に向けて、間髪入れずにこう言った。

「いやよ」

そう言いきった亜矢子に向かって琢磨が叫ぶ。

「おい、だから失礼だって言ってるだろ」

「あら、私は国家権力の犬になんかなりたくないわ。個人的な趣味で、今回の事件は追っかけて見たいけど警察に協力するなんて事は絶対しない」

「だから、お前な!」

場を取り繕おうと琢磨は飛び上がる様に立ちあがり、亜矢子の手を引っ張って、彼女の顔を自分の顔の近くに引き寄せる。

「お前はな、俺に対しては、どんな言葉遣いでも構わんが、見ず知らずの目上の人に、失礼な言葉づかいをするんじゃない。それに、その態度もだ」

耳元で何かを噛み潰すような口調でぼそぼそと語る琢磨の言葉を聞いた亜矢子はゆっくりと目をつぶり、暫く黙りこんだ後、ゆっくりと薄眼を開けて瞳を琢磨に向けた。

「私は嫌なの。誰かに命令されて下僕の様に動きまわるのが。分ってるでしょ、私の性格は……」

「それは、なんなるわがままだ、直すべき汚点だぞ…」
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