Tree~一つ一つが葉になるとき
Fall~味わう時

一枚の思い出


「一枚の思い出」~短編小説

明日は待ちに待ったハロウィン!

少女の足取りは軽かった。

毎年ハロウィンの日になると彼女は仮装して町に出かける。

扉をたたいて「トリック・オア・トリート」と言うと

大抵の家では、お菓子の袋を持った大人達が笑顔で出迎えてくれ、
彼女のバスケットの中にお菓子を入れてくれるのだ。

別にくれなかったからと言っていたずらするわけなんてないのに

無条件で大人達が自分に優しくしてくれる事が少女にはたまらなく嬉しかった。



その夜少女は奇妙な夢を見た。

何故か少女は魔女の格好をして、かぼちゃの家に住んでいた。

その時、トントンっと扉をたたく音が・・

少女は恐る恐る扉を開けた。そこに立っていたのは一人の魔女。

「トリック・オア・トリート!でも今日は私がプレゼントをあげよう。
今時、逆チョコがあるなら逆ハロウィンもありでしょってことで♪」

その言葉に少女は思わず脱力しかけたが何とか態勢を取り戻しながら尋ねた。

「プレゼントって・・何ですか?」

「フフフ。いいものいいもの♪」

そう言って魔女が取り出したのは一枚の写真。
それを渡したとたん、魔女は空の彼方へとほうきで飛んでいった。


                
翌朝、彼女が目覚めると枕元には一枚の写真。

そこには母親に抱かれた少女によく似た女の子の姿があった。

母親に聞が幼い時に亡くなった少女の姉らしい。

その写真の裏には小さく小さく刻みつけるように書かれた

「ただいま」の文字。

少女はその写真を見ながら泣いている自分に気がついた。

涙がポタリと写真を濡らした。



「お姉ちゃん、ありがとう。」


                         《FIN.。o○》    



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