Tree~一つ一つが葉になるとき
Winter~耐える時
Angel・red・night
「angel・red・night」~短編小説
最後に彼女の眼が捉えたのはまばゆい光に包まれた車のヘッドライト。
クリスマスイブの日に彼女の命の火は意外にもあっけなく消えた。
あまりにあっけなすぎて彼女は自分が死んだことを
まだ受け入れることができないでいた。
これは彼女が死んで一日経ったクリスマスの日の話。
少女はじっと見つめていた。
目の前にはベットに横たわる一人の青年。
青年の頬には無数の涙の跡。
泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。
彼女は今、その青年の上をふわふわと漂っている。
永遠の別れを告げてすぐに出ていくつもりだったのに・・
昨日会ったばかりの顔。
広い背中。
整った部屋。
それら全てが懐かしいものに思える。
少女は寝ている青年の腕に自分の腕をからませた。
もう二度とこの手で抱きしめられることはないだろう。
ふいに彼女は恋人の胸の中から出ている赤い光に気付いた。
その光はどんどん明るさを増し、
少女の顔を照らす。
しばらくするとその光は真っ赤なハートの形になった。
少女には誰に聞くともなしにそれが
青年の自分への愛情の塊であると知った。
そして同時に知ってしまったのだ。
この塊を自分が持ち去れば、
恋人の彼女に関する記憶が抜け、
辛い悲しみから解放させてあげることができることを。
次ページに続く
最後に彼女の眼が捉えたのはまばゆい光に包まれた車のヘッドライト。
クリスマスイブの日に彼女の命の火は意外にもあっけなく消えた。
あまりにあっけなすぎて彼女は自分が死んだことを
まだ受け入れることができないでいた。
これは彼女が死んで一日経ったクリスマスの日の話。
少女はじっと見つめていた。
目の前にはベットに横たわる一人の青年。
青年の頬には無数の涙の跡。
泣き疲れて眠ってしまったのだろうか。
彼女は今、その青年の上をふわふわと漂っている。
永遠の別れを告げてすぐに出ていくつもりだったのに・・
昨日会ったばかりの顔。
広い背中。
整った部屋。
それら全てが懐かしいものに思える。
少女は寝ている青年の腕に自分の腕をからませた。
もう二度とこの手で抱きしめられることはないだろう。
ふいに彼女は恋人の胸の中から出ている赤い光に気付いた。
その光はどんどん明るさを増し、
少女の顔を照らす。
しばらくするとその光は真っ赤なハートの形になった。
少女には誰に聞くともなしにそれが
青年の自分への愛情の塊であると知った。
そして同時に知ってしまったのだ。
この塊を自分が持ち去れば、
恋人の彼女に関する記憶が抜け、
辛い悲しみから解放させてあげることができることを。
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