サヨナラいとしい子
ハルトが駅のホームについたとき、

反対側のホームで女の子が
椅子に座って本を読みながら
電車を待ってる姿が目に入った。

先に彼女のほうに
電車がきた。


読書に集中していた彼女は、
電車がきたことに気づいて、
慌てて乗りこんだ。



電車が過ぎ去ったあと、
ハルトは気がついた。



彼女の忘れ物に。




彼女が座ってた席に、
何か布のようなものが
置きっぱなしになっていた。


ハルトは、
反対側のホームまで行って
それをひろった。



「あの子が首に巻いて使ってるの
何度か見たことあるから
あの子のもので間違いない」



ハルトは神妙な面持ちで
ショールを眺めながら
つぶやく。


「どうしよう…」

って、返してあげなさいよ。

彼女、探してるかも
しれないじゃない。



ハルトはショールを
両手でにぎりしめたまま、

「これって、
チャンスだよなぁ?
話をする…」

訴えるような、気弱な視線を
アタシにむけた。




< 14 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop