サヨナラいとしい子
あの子とアタシが
出会ったのは、

十年くらい前の事。



家無き子だったアタシは

頼るべきものもなく
一人さまよっていたの。



当時の記憶は
ほとんどないわ。


もう年だからかしらね。



でも

これだけは忘れる事なく
はっきりと覚えている。



あの子の手の平の温かさを。




どこをどう
さまよっていたのかも
覚えていないの。


どうしてさまようことに
なったのかさえも。



ただアタシは
とっても怖くて寒かった。


時雨が体温を奪って、
お腹もすいて、

アタシは一人凍えていた。


さみしくて、
それだけでもう
死んでしまいそうだった。




だから、

あの子がアタシを
抱き上げたとき、

アタシは震えた。


嬉しすぎて。



少女マンガの
ヒーローみたいでしょ?




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