サヨナラいとしい子

アタシの母は、飼い犬だった。

アタシが生まれたとき、
飼い主は、これ以上犬は
飼えないからって、

生まれたばかりの兄弟とともに
捨てられたこと。


捨てられたアタシたちは、
散り散りにさ迷った。


他の兄弟たちが
どうなったのかわからない。





アタシは生涯
子を持つことはなかった。


ハルトはアタシに
ゴメンな、って何度も謝って、

お年玉を下ろして
アタシに手術をさせた。


「子どもまで飼って
あげられないから」って。


「その分、
お前が寂しい思いをしないように、
絶対大事にしてやるから」

って誓ってくれた。




アタシは一度も
ハルトに裏切られなかった。



幸せな生涯だった。



うん、大丈夫ね。


そんなハルトだから、

きっと彼女のことも
幸せにしてあげられるわね。




アタシは、どうだったかしら。


アタシは、ハルトを
ほんのちょっとでも
幸せにしてあげられたかしら…？