サヨナラいとしい子
「勇気出して、誘えって?
…だよなぁ〜。
わかってるんだけどなぁ…」


ぼんやりした声で
つぶやいて、

アタシの頭を
くしゃっとして、
宙をあおいだ。



言葉は通じなくても、
アタシの気持ちは
ちゃんと伝わってるみたいね。


だからかしら。

仕事から帰ってきて、
家でくつろいでるとき、

いつもアタシに
色んな話をしてくれるの。


今日あったこと、
仕事のこと。


そして
大好きな女の子のこと。

これは、アタシにだけ
話してくれるのよね。



アタシは
毛布に横たわったまま、
ハルトの膝にあごをのせて、
じっと話を聞いてあげる。



叶うなら、
ハルトの赤ちゃんを見てから
逝きたかったんだけど、

この調子じゃ
いつになることやら。




恋には奥手なハルトだけど、

かなり大きな会社に
勤めてるのよ。



隣の奥さんが、
ハルトのお母さんに
言ってたの聞いたんだけど、


良い大学に行って、
良い会社に就職して、

親孝行な自慢の息子さんね、
って。



そう、自慢なの。




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