青い海
それは理屈じゃない。
大人たちは皆そういうけど、それは『真実』ではない。
もしそれが『真実』ならば、私は『女』じゃなくていい。
「よくそれ言われる。でも・・・そんな私も私だから」
「・・・・・なにかあったのか?」
初対面なのに、私の心を見抜いてしまう郷本君。正直、びっくりした。
「・・・・・親にね、ダメな子って言われたんだ。私ね、昔から人に嫌われるのが怖いんだ。どんなことよりも。だから・・・・もういらない、って言われた気がした。親に拒絶されたような気がした。私、いつも笑ってたんだ。誰にも弱みを見せないように。誰にも迷惑をかけないように。でも・・・もう・・・・」
無理なんだ。疲れきってしまったんだ。もうなにもしたくなくなってきた。
「なんで弱いところを見せないんだ?」
「・・・・・怖いから」
「何が?」
「全てが」
お願い、そんな眼で見ないで。おいていかないで。
いい子にするから。何も欲しがらないから。
そんなことを物心がついてきた頃からずっと思っていた。
独りという寒さを、生まれた頃から感じてきた。
「・・・・自分の本性を見られるのが、怖いんだ。
本当はこんなに弱い奴だったんだって思われたくないんだ。・・・・・もう誰にも捨てられたくない」
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