矛盾という名の願い
「あ、私、家こっちだから。バイバイっ」
作り笑顔浮かべて手を振れば快く別れた偽りの友達。
本当は家になんか帰らない。というか一人暮らし始めたがらいつ帰ってもいいのだけれど。
原因は簡単。家に居づらくなったから。
長女に生まれた私に愛を与えられたことは一度もなかった。その代わり私と5つ離れた弟には激愛だった。
弟を恨んではいない。
ましてや嫌いなわけでもない。むしろ大好きな部類に入る。弟は本当に優しい子でいつも私に向けてくれる笑顔が大好きだった。
だけど、いくら弟がいてもそこが私の居場所でないことなど明白だった。
弟にだけ用意され、私には用意されないご飯、誕生日プレゼント。
弟にだけ向けられて私には向けられない笑顔。