天使の羽根

 優しさにかこつけて、満たされていたのは穂高だったのだ。

「じゃあ明日、学校が終わったら月夜ヶ橋に来いよ……そしたら渡してやるから」

 穂高がそう言うと、あずみは嬉し涙を拭いながら「うん!」と頷いて見せた。

 そして、すぐさま「じゃ、今日はもう帰るね」と言って、穂高の手を擦り抜けたあずみは立ちあがった。

 穂高の手が、拍子抜けしたように宙を彷徨う。

「……何だよ、いつもなら帰れって言われるまで居座るくせに」


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