天使の羽根

 しかし、その腕の限界は近付きつつあった。

「ダメ穂高……離して……みんな落ちちゃう」

 宙ぶらりに両腕を引き千切られんばかりのあずみは、穂高を持つ手を緩めていく。

「バカ! 離すなっ!」

 そう言って今一度、力を込めた瞬間だった。

 片方の腕に気を取られた穂高は、欄干を持つ手に痺れが走り、且つ滑った。


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