天使の羽根

 だが、道彦は言葉を止めない。

「忘れろとは言いません。でも、振り向かないで前だけを見て、智子さんには生きて欲しい……もう二度と、死のうなんて考えないでほしい」

 道彦は、心から願うと付け足すと、双眸を閉じた。

「私は、智子さんが幸せになってくれればそれでいい」

 優しい声で奏でた言葉は、穏やかで素直な気持ちを表していた。

「道彦さん……もしかして」

 そう、あずみが聞きかけた時だった。


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