天使の羽根

「気にしないで、あたしは別にそんなつもりじゃないから」

 智子は慌てて取り繕うように言って見せたが、小さく溜息を落とした。

 あずみは、その仕草を見逃さず、チクリと心が軋む。

「あの子達ね、あたしの妹じゃないの」

「え?」

 再び溜息と共に吐き出された智子の言葉に、あずみは眉根を下げる。

「三月に酷い空襲があってね、民間人がほとんど死んじゃったの」


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