天使の羽根

「ああ、何もかも焼き尽くす爆弾だ、今日もどこかへ落としに行くんだろう」

「行くんだろうって他人事みたいに……ここには落ちると思わないのかよ、怖くないのか?」

 穂高は不安げに聞いた。だが、道彦にあまり気にした様子はない。

「先日、名古屋が空襲される被害があったそうだ、米軍は大きな街を狙って落とすからな……ここにはもう、三月に落とされてるんだよ……それでも内心は怖いさ。いつ、自分が撃たれるかと思うとビクビクしている」

 そう言って目を伏せ、レンズを拭く手を止めたが、小さく溜息を落としてすぐさま、作業を始めた。


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