天使の羽根

 呟いた小さな声は、微かに震え、肩を小刻みに揺らしている。

「ほら見ろ、国なんかより守りたいもんなんだろ。だったら、自分の手で智子さんを幸せにしろよ。人に頼むな。遠くへ行って智子さんと離れて、わざわざ死にに行く事ないって言ってんだろ?」

 道彦は、グッと両拳を握り締めた。

「あんたは間違ってるよ! そんな事したって、あんたが死んだって誰も喜ばねぇ!」

「戦地で死ねれば英雄だ」

 自信を失ったように、か細く道彦が言う。

「馬鹿だろ、お前!」

 追い打ちをかけるように穂高は叫んだ。

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