天使の羽根
Act.2
この時代に来てからというもの、穂高もあずみも、満腹感を感じる事がなかった。
それは胃袋もさることながら、極めて大きな影響は心の方だった。
毎日がジャガイモや、汁が多めのすいとん、梅干といった食事ばかりが並ぶ中でも、我儘な穂高でさえ文句など言わなかった。
いや、言えなかったのかもしれない。
穂高にとっては、誰かと一緒に食事をするというありがたさの方が上回ったのだろう。
どんなに暗い世の中でも、明るい笑顔を絶やさない人たちを見るだけで、自分はもっと頑張らなければならないと思ったに違いない。