天使の羽根

「あずみさん、穂高君! 早く防空壕へ!」

 豊子が、まだ眠気眼を擦るキヨと百合に頭巾を被せている。

「あずみさんたちの防空頭巾もあっちにあるから取ってらっしゃい! 早く!」

 豊子が叫ぶと、穂高は大きく頷いて見せる。

「あずみ、今、頭巾取ってくるから待ってろ!」

「でも」

「すぐに戻るから!」

 穂高はそう言って、奥の間借りしている部屋へと急いだ。

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