天使の羽根

 百合はまだ幼く、こんな慌ただしい中でも「おしっこ」と言って泣き始めると、被っていた頭巾を脱いでしまった。

「何やってるの、百合! ちゃんと被りなさい!」

 豊子の声にビクリと肩を上げた百合は、更に大きな声で泣き出す。

「大丈夫よ、百合ちゃん」

 あずみは、傍らに落ちた頭巾を取ると、百合を宥めながら被せた。

「おしっこ……」

「後でね、今は逃げるの、いい?」

「ヤダ、おしっこ~」

 そう泣いた瞬間にも、地響きを伴う爆発音があちこちから聞こえた。

 その大きな音に驚いた百合は、表情を蒼白させ、あずみの言う事を大人しく聞き始める。

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