天使の羽根

 智子はあずみの腕を振り払うと、すぐ戻るから、と言って戻っていってしまった。

「行くぞ! これ被れっ!」

 ようやく戻ってきた穂高は、手に持っていた頭巾をあずみに渡すと、その手をしっかりと握りしめた。

 慌ただしく家の前に出ると、炎は既に町中に広がっていた。

 火の粉が舞い、まるで生きているかのように体を熱くさせる。目の前には、火を纏った人影が走る。

 のた打ち回り、地面に転がるも、誰も助けようとはしない。

 いや、出来ないのだ。


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