天使の羽根

 誰もが、自分が逃げる事だけに一生懸命で構っていられない。清もまた、百合を守るのに必死で、火だるまの人間を避けて走る。

「うそ、だろ……」

 穂高もあずみも、乾いた喉に無理やり息を呑んだ。

「あずみ! 離れるなよ!」

 尋常ではない光景に、穂高は更にあずみの手をギュっと握った。

――絶対に生きてみせる。

 そんな想いを胸に、あずみの腕を引っ張った。

< 396 / 562 >

この作品をシェア

pagetop