天使の羽根

 髪は見る見る燃え上がっていく。

 穂高も懸命に炎を消そうと必死だった。

「百合! 今消してやるからなっ!」

 ようやく消えた炎の下から出てきたのは、大やけどを負ってぐったりとした百合だった。

「百合! 百合しっかりしろっ!」

 言いざま、清は百合を抱えて川へと一目散に駆け出した。

 だが一瞬、先ほどの嫌な予感が蘇った穂高は「待てっ!」と言って清を追いかけた。そして、煙の切れた視界に飛び込んだ光景に、思わず息を呑む事になる。

「うわっ!」

 穂高はすぐさま尻込みをしたが、意思に反して、その背中は次々に押され川へ誘導されていく。

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