天使の羽根
穂高の耳元で、突然と飛び込んできた幼い鳴き声が掠れていく。その子供を背負う親は、既に水に浮かんでいる。このままでは時期にこの子供も沈むだろう。
「死ぬな……っ!」
穂高は必死に子供を抱き上げようとした。しかし、しっかりと親と繋がった紐はなかなか外れない。
死んでも尚、我が子を離さないとしているように見える。
穂高の頬だけが濡れていく。
「ちっきしょう……」
顔の半分も水に浸かり、もがく子供を見ているだけの自分にやるせなさが募っていく。
穂高は、その小さな瞳と交わった視線に生がなくなっていくのを感じていた。今にも、命が消えていきそうだった。