天使の羽根

「くっそぉ……何で、みんな……死ななきゃならねぇんだよ」

 どんなに必死に持ち上げようとしても、次から次へと人波が押し寄せてくる。挙げ句には、目の前の子どもの頭さえ踏みつけられて行った。

 最後に合った目が、どうして助けてくれないの、と責められているようで、自分の不甲斐なさを突き付けられた。

 だが、穂高は何もしてやれなかった。必死に逃げる人さえも責める事が出来なかったのだ。

「……ここは地獄なのか……」

 ふいに漏れた穂高の声は、奈落の底へ落ちていく。

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