天使の羽根
「守るって、こういう事かよ……生きて、幸せにしてやれないのかよ……」

 穂高は悔しそうに両拳を握り締めた。

「でも、道彦さんは守ってくれて」

 いつの間にか、あずみは寄り添うように穂高の隣に立ち呟いた。だが、穂高には納得の出来る言葉ではなかった。

 血が滲む程に握り締めた拳で、穂高は石塀を強く叩きつける。

「こんなの守ってねぇだろ! 死んじまったら終わりなんだよ! 何も守れてねぇんだよ!」

 何度も何度も、死んでいった人たちの痛みに比べたら他安いと言わんばかりに、穂高は拳を打ちつけた。

 あずみは、やがてその腕を掴み止める。

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