天使の羽根

「早く行って! キヨだけじゃない、あたしの心が変わらないうちにっ! 早くっ!」

 豊子は必死にキヨの体を抑え込んだ。

 嫌がるキヨは、豊子の腕に齧りつき、懸命に腕を離れようとしていた。

 それでも、豊子はキヨを離さなかった。

「キヨ、あんたはこの時代の子なの……お願い、もう智子って呼ばないから……あたしを一人にしないで……」

 穂高は、あずみを抱き締める腕を更に強くした。

「もう……振り向くな、ここは俺たちの生きる場所じゃない」

「穂高……」

「どんなに辛くても……残る場所じゃないんだ」

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