天使の羽根
 どうにも煮え切らない空気が漂う中で、穂高は震える心を抱えたまま史恵を直視できないでいた。

「ごめんね、穂高。あたし、何もかも知ってたんだけど、どうしても受け入れられなくて……」

「だったら、あずみがどこにいるのか言えよ!」

「少しでもその時が来ても平気でいられるようにしてたんだけど……でも、無理みたい」

「そんな事、今更聞きたくねぇんだよ。あずみがいないってどういう事か説明しろっつってんだよっ!」

 二人の間で気持ちを彷徨わせる穂高は、苦しい喉元を抑え叫んだ。

 すると、高生は徐に行動を起こし、押入れを開ける。そして、あの晩、橋の上に置き忘れた二人の鞄を取り出した。

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