天使の羽根
 
 どうして自分一人だけがここにいるのか、そう思うと居た堪れない気持ちに押し潰されそうだった。

「高志は?」

 ふいに思い出したように穂高が呟くと、高生は「ああ」と言って続けた。

「高志には、穂高くんを連れて帰って来た時に話したんだ。居なくなった友達が帰って来たと思ったら坊主だなんて説明するには嘘がつけなかったからね……それに、一人で穂高くんを抱えては来れなかったから。でも、どうにも納得してくれなくて」

「当り前じゃん、誰が信じるかよ。過去から帰って来たなんて」

「それもそうだね」

 高生はそう言って、すぐさまクッと意を固めたように、穂高を見やった。

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