天使の羽根
「母さんに、会って来てくれるかな」

「え?」

 思いも寄らなかった突然の申し出に、穂高は戸惑った。

 言われてみれば智子の姿がない。

 いつもならしゃしゃり出てくるような騒がしい人がいない事が、心のどこかには引っ掛かっていただろう。

 だが、内心ホッとしていた穂高だった。

 それもそのはずだ。

 目の前で死んだはずの人間かもしれない。高生は何も否定しない。今の時代に生きているかもしれないのだから、怖くないとは言えない。

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