天使の羽根

 それでも、高生の意思には意味があるのかもしれない、と感じている事も事実だった。

「どこにいるんだよ、っていうか、何で会わなきゃならないか教えろよ」

「母さんは、一昨日入院した……前は食中りだなんて言って誤魔化してたようだけど、本当は違うんだよ。随分、痛みを我慢してたと思うよ……でも、会って欲しいのは、穂高くんがこの時代に帰ってきた後の過去を実際に知っている唯一の人だから」

 そう言って小さなメモを差し出す。

「本当は母さんも全てを語らない、でも穂高くんになら話してくれるかもしれない……それに、もう長くないらしい」

 差し出された紙には、智子の入院している病院名と部屋番号が書かれていた。

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