天使の羽根
史恵は涙に濡らした瞳を引っ下げ、勢いよく振り向いた。
「迷惑なんかじゃない! あたしはただの一度も、そう思った事ないっ!」
そう叫びざま、史恵は穂高の胸に飛び込んだ。
背中に回す腕にギュッと力を込め、離すまいと強く抱き締める。
「あたしが行かないでって言ったら残ってくれる?!」
「え?」
「ずっとここに居て欲しいって言ったら、傍に居てくれる?!」
心の底に仕舞っておいたはずの声を発し、史恵は更に穂高を抱き締める。