天使の羽根


「それは」

 穂高は史恵を包み込むように腕を伸ばすが、ぐっと堪えて拳を握った。

「ごめん……何もしてやれなくて」

 その言葉を聞くなり、ハッとした表情を見せた史恵は、熱くなる喉を冷ますように唾を呑みこんだ。

 静かに深呼吸をしながら、吐き出す言葉を探す。

 そして、穂高に回した腕を解き、ゆっくりと離れた。



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